石畳の地面に流れる鮮やかな赤。
紛れもなく、ニーナの頭から流れているソレにドクンッと心臓が大きく跳ねた。
じわじわと広がっていくそれはニーナの血以外のなにものでもなく…
「ッ…いや…ニーナ!ニーナッ!」
呼びかけに応えないニーナに焦燥感が募り、それに比例するように声が大きくなる。
駆け寄ろうとしてもがくが、びくともしない。
「大人しくしな」
後ろからチッと悪態が聞こえたかと思えば、私の口に湿らせた布があてられた。
「んんッ!」
首を振って抵抗するも、ベロニカの力はとても強く、振り払えない。
あの華奢な腕のどこにこんな力があるのか不思議なくらい強い力。
もがいているうちに肺一杯に布の匂いを入れてしまい、視界がぐにゃりと歪んだ。
まずい…と思った時にはすでに遅く、意識が薄らいでゆく。
「手荒な真似はしたくなかったが、万が一俺たちの思考を読まれては後で厄介だ」
歩み寄ったジェインの冷たい指先が私の頬に触れる。
薄れゆく意識の中、キッと精一杯睨みつければ深まる笑み。
「ギルティスへ着くまでゆっくり眠れ、アークの姫よ」
愉しそうな笑みと耳障りな声色を最後に、私の意識はフツリと切れた。

