「フフッ…やっとこの小芝居をやめていいの?いい加減侍女ごっこは終わりにしたいと思っていたの」
あのベロニカから出たとは思えないような言葉。
私付の侍女になってお世話をしてくれていた時の彼女と同一の人物ではないかの様な変貌ぶりに酷く驚く。
「ベロニカ…さん…?」
「気安く呼ばないでくれる?」
ニーナが僅かな希望を込めて呼びかけるが、その希望は冷たい瞳によって一瞥された。
禊用の衣服をうっとおしそうに脱ぎ捨て、持ってきていた籠から黒い衣と短剣を取り出すベロニカ。
バサッと広がった黒い衣には金色の鷹の刺繍が施されており、それを体に巻きつける。
慣れた手つきで短剣を腰にさし、肩まである髪を頭の上で一つにまとめる。
「ベロニカ…あなた…まさか…」
呆然としながら呼びかければ、髪を結び終わったベロニカがこちらを見据える。
「そのまさかよ。私は侍女に成りすましてあんたを監視していたの」
フッと口角を上げて笑うベロニカもまたただの女性ではないと言うことが伝わってきた。
私に対して向けられた言葉に、男がニヤリと笑う。
「と言うことは、そいつが例の姫か」
「そうよ」
躊躇いもなしに即答し、私を見据える2人の男とベロニカ。
「能力が戻ったと言うのは本当だったか?」
「えぇ、この侍女に告白しているのを聞いたから間違いないわ」
その言葉にドキッと心臓が嫌な音を立てる。
あの時の会話を聞かれていたんだ…
これでもう言い逃れは出来ない。

