「俺の合図もなしにお前が動くからだ」
チッと悪態をつく素振りは粗暴さが表れているようで少し怖い。
小太りの男はもう一方の男に頭が上がらない様子で、少しビクつきながら口を開く。
「けどよー兄貴、兎が「兎がじゃねぇんだよ。何のために俺たちがこんな国に来たと思ってんだ」
言い訳をしようとしたところを一喝する男としょげ返る小太りの男。
一見似ても似つかぬこの二人はどうやら兄弟らしい。
この場所に在って明らかに異質な二人の男の登場にニーナが警戒を示す。
「貴方たち一体どこから来たの?」
硬い口調で口を開けば、兄の方がピクリと反応してこちらを見据える。
見据える…と言うよりかは睨みつけるに等しいその視線にニーナの体が僅かに震えた。
「答えなさい!」
震える声でニーナが叫ぶ。
「威勢のいい女だ。こういう女を屈服させるのは愉しいだろうな」
クク…と笑う男にゾクッと悪寒が走る。
それはきっと私だけではなく…
「誰かッ!」
耐えきれなくなったニーナは護衛に助けの声を上げる。
静寂の森に響く切羽詰まった声。
しかし、その声に反応して返ってくる声はなかった。
「無駄だ。見張りの護衛は今ごろ眠ってる」
冷たい瞳をした男は口元を釣り上げて笑った。
護衛が眠っている原因は目の前の男たちであろうことは容易に想像できた。

