コンコン――――
部屋に穏やかな時間が流れ始めたその時、小さく扉を叩く音が鳴った。
「誰?」
「ベロニカです。禊用の服をお持ちしました」
ニーナが扉に向かって叫ぶと、外からベロニカの声が聞こえた。
「入って」と短く声をかければ、両手に白い衣服を抱えたベロニカが入ってくる。
禊用の衣装は純潔を表す白。
水につかるからかその布の量は薄いのが見て取れる。
昨日まではこの儀式が済めばシルバに打ち明けなければならないと悩んでいたけれど、今はその気持ちも少し和らぎ禊に臨む心構えができた。
「時間も迫っていることですし、早く禊を済ませてドレスを着ましょう」
「そうね」
ニーナの弾む声につられて椅子から立ち上った。
そして一時間後―――
私たちは数人の護衛と共に禊の行われる泉へ来た。
泉と言っても自然にある様な泉ではなく、人工的に作られた泉のようで。
石造りの浴槽のような外観だった。
深い森の中、そこだけは切り開かれていて光が水面を反射する。
花びらが浮かぶ泉の水はとても澄んでいて、底まで見えるほどだ。
「エレナ様、ベールを」
泉に見惚れていれば、私と同じく禊用の服を着たニーナが手を差し出す。
禊の世話をする侍女もまた禊用の服を着なければならないのだ。

