王城に戻ってきても出てくるのは溜息ばかり。
エステを受けている時も上の空で、明日の式の流れも全く頭に入っていなかった。
こんなにも過密スケジュールの中、ニーナに「少し息抜きをされてはいかがですか」と言わせるくらいなのだから、端から見ても私の様子はおかしかったのだろう。
ニーナの言葉に甘えて城や庭を散歩していたら、あっという間に時間が経った。
「はぁ…どうしよう……」
庭が見渡せる窓に寄りかかりながら、今日何度目か分からない溜息を吐く。
外はもう月明かりが柔らかく降り注ぐ時間帯。
カチャ…と窓を開ければ少し冷たい風が頬を撫で、後ろでカーテンが揺れる。
結局、一日中考えても私はまだ迷っていた。
むしろ、国民に祝福の言葉をもらったことで、このまま私の胸の内にしまっていた方が良いのではと言う気持ちが強くなったのだ。
国王の妃として認められ、民から慕われる妃になりたい。
その“欲”は増すばかりだった。
部屋に戻ろう……
そう思って窓を閉じようとした時だった。
グイッ……―――――
何か強い力に引っ張られ、カーテン越しに体を拘束された。
「ッ…!」
突如浮かんだのは私を攫おうとした刺客の存在。
能力が戻ったことで敏感になっていたのか、最初に浮かんだのはあの夜の事だった。

