シンと静まった夜の後宮―――



「え?」

「え?」


見上げれば少し驚いたような訝しげな表情のニーナがシーツを替えていた手を止めてこちらを見る。

端から見れば、お互い見つめ合い、疑問符を浮かべていると言う何とも奇妙な光景だっただろう。





「今呼んだでしょう?」


読んでいた本を机に置き、ニーナに問いかける




しかし――――


「いいえ……空耳では?」


驚いた表情のまま否定され、それが嘘でないと分かる。

確かに呼ばれた気がしたのに。




「最近多いの…」


呼ばれたと思っていても私の気のせいだったり。

ヒソヒソ声がしたと思って周りを見渡すけど誰もいなかったり。

それが一度きりだったら気にならないのだが、こうも続くと悩みの種にもなる。

ニーナは私の表情が曇っていることを気にしつつも、明るい声で応える。




「婚儀が迫っているので緊張なさっているんですよ」

「そうなのかな…」


少々の不安が胸に残り、重い溜息を吐くと、ニーナがおずおずと口を開いた。




「マリッジブルーですか?」

「ッ……」


不覚にもその言葉に頬を赤らめる。