アリはどんどん大人になっていく。

綺麗に、可愛く、魅力的に。

時間軸に置いていかれてしまった俺は、あの日と変わらない姿のままで。


時は待ってくれない。

時は戻ってくれない。


だからこそアリには早く前に進んでほしいのに。

時間と共に霞んでいく俺との思い出を抱き込んでいる小さな身体。

痛々しくて見てられない。


「シオ、どこにいるの?」


独りだと寂しいだろうからと、未だに海底で寝転んでる俺を探そうとする愛しい人。

どこまでも、アリは優しい。


『アリ、もういいんだ。俺達のことは俺だけが忘れずに持っておくから、アリは手放してくれていいんだ。過去の想いにしなきゃいけないんだよ』


アリを求める輩は多い。

きっと、彼女を置いて死ぬような俺なんかよりずっといい男がいるはずだ。


だからお願い、

もうここにこないで。





「アリア、」


不意に後ろから聞こえた声に、アリと同時にゆっくり振り向いた。


『ルイ』
「ルイ」


そこにいいたのは、懐かしい俺の親友で。


「帰ろう、雨が降るって」

「あめ、」

「どしゃ降りになるって言ってたから、迎えに来た」


そうか……。

俺がいなくなって、今までずっとルイがアリを支えてくれていたのか。

そうか、ルイはアリが好きだったのか。


「シオ、冷たいよね」

「大丈夫。海の中には雨は降らないよ」

「……そっか、」

「アリアを雨に濡らしたら、俺がシオンに怒られちゃう」


だから、今日は帰ろう?


俺の目の前で、俺が触れてやれないアリの頭を優しく撫でる手。


そうだよ、