キラキラ光る水面をしゃがんで眺めているその後ろ姿も愛しくて。


「シオ、」


俺を呼ぶ甘い声。


「っ、シオ、」


俺を想って流す温もり。


俺にはどうやっても、その震える小さい体を抱き締めてやることはできなくて。

俺にはどうやっても、その声に応えてやることができなくて。


『アリ、』


こんなに近くにいるのに……。


『もう来るな。もう忘れろ』

「シオに、会いたい」

『無理だよ、アリ、』

「好きよ、シオ」

『俺も、大好き“だった”』





サーフィンが趣味だった俺は、少しでも時間ができるとアリを連れてよくこの海にきていた。

パラソルの下、海風に揺れる長い髪を押さえながら波に乗る俺に手を振っているアリの笑顔。

向日葵みたいに明るい笑顔。


毎日が幸せだった。

ずっと、ずっと続くと思ってた。


だけどもう、アリの瞳に俺は永遠に映らない。



5年、だ。



俺が波に飲まれて、この海の底に沈んでしまってから、今年でもう5年。

アリはあの日から毎日のように、ここで変わらず泣いてくれるけど……。


『もうやめなよ』


俺のことなんてもう忘れてくれよ。