夢を見たの。
笑ってる私と、隣にいるあなたと。
繋いだ手の温もりと、抱き締められた胸の広さと。
甘やかしてくれる声と、ふんわり薫るあなたの匂いと。
全部全部、私のためだけのものだった。
「結婚するんだ、俺たち」
「っ」
嘘だと言ってほしかった。
お前を置いてそんなことしないよって、笑ってほしかったのに。
幸せそうに口許を緩ませるその顔は、隣に立ってるたんぽぽみたいな彼女に向けられているもので。
「......ついにやったんだ、お兄ちゃん」
「おうー、ついにな」
「おめでとう、よく貰ってもらえたね」
私の言葉に彼女が微笑う。
私の気持ちも知らないで、いかにも幸せそうにくすくすと。
笑って、見つめて、また笑う。
「精々捨てられないようにね」
見てられなかった。
これ以上いると窒息しそうだった。
だから私は、逃げた。