「っ、んー……」


暮れがかりの空と朱に染まる田んぼが外一帯に広がった頃、右耳のすぐ下で憎らしい寝ぼけ声が聞こえた。

この街にもこんな長閑(のどか)なところがあったんだー、なんて、呑気に感心してたせいで怒鳴るのも忘れたて。


「んあ……悪ぃ、」

「いいえ」

「……つーかさ、ごめん、ここどこ?」

「さぁ、私に聞かれても」


悪気を微塵も感じない態度に素っ気なく答える。


「え、まじ?」

「……まじ」

「うわー、ごめん」


寝顔を盗み見たときも思ったけど、隣で髪をかき上げた彼はやっぱり美形だった。

……こう言う奴、苦手だ。


「よっし、」

「へっ、え、ちょっ!」