「今回の敗けで、らんはもうサッカーやめちゃうの?そーじゃないでしょ」


顔を隠していた腕を退けて隣に座るみやを見上げる。


「この経験をどう次に繋げるかが重要じゃないの?なのにいつまでもそーやってガキみたいに」

「............」

「悔しかったら今度の試合でハットトリックでも取ってみなさいっての......ね?」


にこり。

その笑顔はいつでも俺の味方。


挫折を知らずにここまで昇ってきた俺に、厳しいことを言うのはみやくらいだった。

どんなに結果を残せても、みやはどこかを指摘してくれた。


ほんの半年前、有名なチームから指名を受けて浮かれてた俺にも。

卒業間近になってそのオファーにビビってスランプを起こしてる俺にも。


みやだけは変わらずいてくれた。










「そんなことよりさっ、あたしお腹空いちゃったー。ご飯食べにいこう!」


俺の悩みを“そんなこと”で片付けてさっさと立ち上がってしまうみやに吊られて上体を起こす。

ずっと下になっていた背中に冬の風が当たって、目が覚めた。


「さて、朝月 嵐くん?」

「?」

「あのボール、先にシュートした方が勝ちね。負けたらご飯おごり!よーいどん!」

「っは?ちょっ、」


言ってすぐに走り出すみや。


「ゴール!」


立つ暇もなくグラウンドに響いた声。

意地悪い笑みを隠さず振り向いたみやは、俺に向かって大きく手招きする。





「ほらー、いくよー!」