「なんで負けたんだろ......」


高校で最後の試合。

決勝戦、同点で迎えた絶好のチャンスにボールを持っていたのは俺だった。

ノーマーク。

しかもシュートコースは誰が見ても大きく開けていた。


「なんで、」


あのとき決めれていれば、結果は違ったかもしれないのに。





「らん」


寝転んでる俺の上から降ってきた声にも応える余裕がない。


「朝月 嵐(らん)くん、いつまでそーやって寝てるつもりですかー?」


ふわっと、隣に座る気配がして、バカにしているようなそうでないような声が降ってくる。


「みや、」


呼ぶと、そいつはフッと息を溢して「なーにー?」と暢気に笑った。

一番大事な試合でミスをした俺を励ましたり慰めたりする声色じゃないのは確かだ。

でもこいつはいつだって、俺の隣にいてくれる。俺の味方でいてくれる。


「......なんで負けたんだろう、」

「そんなの、らんが決めなかったからでしょ?」

「っ」

「あの場面でエースが決められなかったら、誰だってリズム狂うでしょ」


ぐさぐさと容赦なく俺を刺してくるのは、こいつだけだ。


「だから?」

「......え、」





「だからなんなの?」