「そんな頼りない顔しないの」

「咲々、」

「確かに、あたしは弱虫だし泣き虫だけどね?でも、」

「......?」

「でもね、あたしはちゃんとケイの夢を応援できるよ。だから、そんな顔しなうの」


「泣いてたのバレて言うのもなんだけどね」なんて笑いながら立ち上がった咲々。


時刻は午前3時を大きく回っている。


「これ飲んだら寝なきゃ」


作ってくれた温かいココアをテーブルに2つ並べて、なんでもないと言うように笑う咲々が愛しくて。


「ほらー、もういいから」

「......ほんと、好き、」

「ふふっ、知ってるよ」


抱きついた俺をいつもは必死に引き剥がそうとするのに、今は大人しく腕の中。

ぎゅう、と強く閉じ込めると珍しく俺の背中に咲々の腕が回った。


「好きだよー、圭人(ケイト)」

「っ」

「ごめんね、心配ばっかりかけて」

「そんなこと、」

「ケイが隣にいてくれるだけで、あたしは頑張れるから。いつもありがとう」


狡いなぁ、ほんと。

俺の背中押すように柔らかい声で囁いて、俺の持っている不安を簡単に解いてしまう。

恥ずかしがり屋な咲々が“好きだよ”なんて、それだけで俺は幸せな気分になれる。


「これからは、もっと早く帰れるようにするから」

「無理しなくていいよ」

「好き、咲々」


たぶんこれからも俺の悩みは一生、咲々に関わることだろう。

ずっとずっと、咲々と一緒に生きていくんだろう。

そんな幸せな未来に、腕の中の温もりを感じながら思いを馳せた。





【たまには、ぎゅっと】
(......そろそろ離れて)
(あー、やっぱそうですよね)



end.