「咲々、風邪引くよ」


起きる気配のない咲々の肩を揺らしながら話しかけても、どうやら無駄らしい。


そういえばこの前、今日は咲々の仕事も追い込みだって言っていたし、相当ハードな日だったんだろう。


ベッドまで運ぼうと咲々の上体を起こすと、ゆるゆると安心しきった寝顔が見れた。


「......咲々?」


その目元から溢れたのは涙だった。










「......ん、」

「っ」


腕の中でピクリと動いた咲々は、まだふやけた瞳に俺を映していた。


「ぅあ、え......ケイ?」

「あ、うん、ただいま」

「寝ちゃってたんだ、ごめん」

「いーよ、もう寝な」

「やだ、」

「疲れてるんでしょ?」

「んーん、」


いつもなら必要以上にベタベタするのを嫌う咲々。

こんなに抱き締めていれるのは、咲々がまだ寝惚けているからだ。

彼女の肩に顔うめてしっかりと腕の中に閉じ込めると、「くすぐったいよ。」と不満気な声が降ってきた。