「咲々、」


新しく動き始めたプロジェクトのため、ここ何ヵ月か昼夜逆転の生活が続いていた。


小さい頃からやりたかった仕事だ。

やりがいもあるし、毎日充実した日を過ごすことができている。

仕事は好きだ、だけどひとつだけ、どうしても解決できない悩みがある。


それが、咲々だった。


大学の頃に知り合った、世界で一番大切な女の子。

少し背が高くて、ふんわり丸くて、真っ白な肌はもちもち してて。

全部、咲々にとってはコンプレックスなんだけど、俺にとってはそれも咲々の魅力で。

気が強いところも、優しいところも、笑顔が可愛いところも、全部全部好きで。


そんな咲々と一緒に暮らし始めて1年。


帰りの遅い俺をずっと待っててくれて、玄関を開けると出迎えてくれて、どんなに遅くても一緒に夜ご飯を食べる。

先に寝てればいいって言っても、「ケイとゆっくりできるのは夜だけだから。」とやんわり却下された。





「咲々、起きて」


そんな彼女も、今日は待ち疲れてテーブルに伏せて眠っていた。

俺がいつも部屋着にするカーディガンを羽織って、食器を並べたダイニングテーブルでぐっすり。

時計の針はもうすぐ深夜2時。

今日はいつもよりだいぶ遅くなってしまった。