「......もしもし」
11コール。
留守番電話に切り替わる寸前で携帯を開いた。
『......怒ってる?』
「別に」
『ごめんね?電話するの遅くなって』
「別に」
『仕事、長引いちゃって』
「もういいって、分かってるよ」
そう言って笑うと安心したように彼が息を吐くのが分かった。
午前2時。
声の後ろで聞こえる車の音。
「外なの?」
『うん、帰ってるとこ』
「おつかれさま」
『うん』
口数が多くない彼。
近くにいた頃はこうして電話する機会なんてほとんどなかった。
あの頃は、顔を見れても彼が考えてることが分からなくて、少し怖かった。
だけど今では、声を聞くだけで電話越しの彼がどんな顔してるのかも分かるくらいになっている。
遠距離になって2年。
今日、いや、もうとっくに日付が変わってしまっているから昨日が私達が付き合って5年目の記念日だった。