恐る恐る玄関を開けた先にいた恭ちゃんは、わたしの予想に反してそれほど怒ってはいなかった。

それどころか姿が見えてすぐに引きずり込まれた腕の中。

わたしの首元に顔を埋めて恭ちゃんは深くため息を吐いた。


「あの、そろそろ恥ずかしいんですけど」

「うるさい黙れバカ」

「えー、」

「......バカ、ほんっとにバカ」

「なんだよー」


ぎゅうって音が出るくらいに腕の力を強くされて身動きが取れない。


ちょっと、まじでどうしたのこの人。


「恭ちゃーん」

「お前さー、本気でビビるから寝坊とかやめてくれ。心配しすぎて老けるわ」

「ごめんって」

「しかも原因がゲームってお前は小学生か」

「だって久しぶりだったんだもん、丸1日休みなんて」


最近は毎週末、模試やら入試対策やらで学校に駆り出されてたから、この時間に家にいること自体が本当に久しぶりだったから。


「だからつい夜更かしを......」


そこまで言ってやっと分かった。


『恭ちゃんのバカ!』


一昨年、受験生だった恭ちゃんと会えなくて会えなくて――。