彼女--尋(ひろ)さんと初めて会ったのは、大学のサークルで。

俺より2つ年上で、大学のマドンナだった尋さんにいつの間にか惹かれていた。

わがままで頑固で自由人な尋さん。そんな尋さんが大好きだった……いや、今も好き。


「……着きましたよー」

「あーい」


適当に駐車して、エンジンを切ると、目の前に広がるはずの海は見事に黒く塗りつぶされて見えなかった。


「んー、海の匂い!」


喜々として車を出て行った尋さんを追って、俺も急いで外に出る。

真っ暗な視界の中、潮の匂いと波の音だけははっきりと感じた。

砂に足を取られつつ、はしゃぐ尋さんを見失わないように目を凝らす。