「あーっ、生き返る!」

「……大げさ。って言うか、ほんとに悪魔だよね」

「小悪魔?」

「いや、もはや大魔王だよ」

「えー」

「えー」


深夜の2時過ぎに、俺の車の助手席に乗って寛(くつろ)ぐ女。

最近染め直したというショートボブは、茶色く(いや、金色?)になっていて。

そのくせ化粧はごく薄く、近くで見ないと塗っているかも分からないレベル。

それが恐ろしく彼女に似合っていて、会った瞬間に息を呑んだ。


『りょうちゃん、海見たい』


この人がわがままだってことは、多分、他の誰よりも俺がよく知ってる。

そんなわがままを俺が断れないことを、彼女もまたよく知っていた。