「酒井が教室出た後、職員室行ったら、入江先生が言ってたからさ。"酒井は用事があったので急いで帰させました"ってね?」


…あのハゲ、結構いいとこあんじゃんっ


「…でも、用事って彼氏のところ行く事?」


「…違います」


せっかく入江先生が話を作ってくれたのに。


「用事が終わったので行ってました。」


そう。これでいいの。
これで…


「そっか、んなら次からはちゃんと言うように!」


「分かりました。

ところで先生は何でここにいるんですか?」


「ま、それは…おいおい?」


「…話はぐらかさないで下さい」


話の内容を先生に切り替え、話をそらす。

今の自分を知られたくないから。
今のこの気持ちは何にも例えることが出来ないから。


「…お、電車着いたぞ?」


「…ま、いいです。

今日はありがとうございました!」


それだけ言うと電車に乗り込んだ。


何で先生がこの駅にいたのかは知らないけど、それでも今はヒーローみたいで嬉しかった。

はぐらかされた事を気にしつつも電車に揺られ、家に着く。


電源を切っていた携帯を取り出し、電源を入れ、部屋に入る。