仕事を終えた竹中が、自宅にある倉庫に入ってくる。

照明をつけて冷房を入れる。
スタンドに立ててある赤のレスポールギターを手にして、ジャックをアンプに差し込んで電源を入れる。

パイプ椅子に腰掛けた竹中は、サザンの『さよならベイビー』のイントロ部分をギターで弾く。練習で同じメロディーを演奏しているとドアが開いた。

「おつかれ!」
弾むような声で小田が入ってきた。

「よう・・・・・・」
竹中はギターの弦を見ながら、チラリと小田の顔を見て無愛想に挨拶をする。

小田の後に敦子が倉庫内を見渡すようにして入ってきた。

「こんにちわ」
敦子が竹中に声を掛ける。

竹中が、聞きなれない声に反応するように顔を上げて、敦子の顔を見る。

「正ちゃんが言っていた敦子さん」
小田が竹中に紹介する。

「えっ! 」
竹中が、驚いた様子でギターを持ったまま立ち上がった。