チクンと軽い痛みが一瞬。


生温かくて、柔らかい感触が指を包み込んだ。




「はっ?!!ちょっ、先輩!先輩!何してんですか!!」

「黙ってろ」

「そんないいですって!!!汚いし!!」

「問題ない」




真顔で私の指を咥えている先輩は、何だか艶めかしくて。

この少女マンガのようなシチュエーションに、頭がクラクラする。




……いやいやいや、私には大問題なんですって!





恥ずかしさでいっぱいになって、顔に血が上っていくのを感じる。

やけに耳が熱い。顔も熱い。




うわ……!!何これ……?!

こんな恥ずかしいことを誰にでもしてるの?!








その時、ピタッと何かが私の中で止まった。







そういえば、榊先輩は満原先輩のことが好きだったんだ。


じゃあ、満原先輩が怪我した時もこんなふうにするのかな。

榊先輩は……しそうだな。




私だからこんなことをする、だなんて。

ちょっと特別に思ってしまった自分が、虚しく思えた。







「榊先輩、あの、もう平気ですよ?」








愛想笑いを浮かべながら話しかけると、榊先輩がガタンと仰け反った。

その衝動で、背中を本棚で強打したらしい。





「いッ……!」

「わっ、榊先輩大丈夫です……、か?」







見上げた榊先輩の顔が、熱でもあるのかと思うくらい真っ赤だった。


手の甲で口元を押さえ、私からバッと目を逸らす。







ちょっと……。





「さっさと保健室に行って絆創膏でも貼ってもらえ!」

「ええ?!あ、はい……!」





条件反射のようにドアを開け、その場から走り去る。






何あの顔。

何であんな真っ赤にしてたの?


それにあの反応。





「ヤバいよ……!」






一番馬鹿っぽくて、簡潔な言葉。



今の私には、これぐらいしか言えなかった。