「……私、性格悪いですよ。あと結構打算的ですし」
「知ってる。でも、優しいよ」
「可愛げなんてありませんよ」
「今すごく可愛いじゃん」
「これからも、多分嫌なこと散々言うと思いますよ」
「言ってくれた方が気付けるよ?それに、見ててくれているんだなって思えるし」
「そうですか……」
パッと見、こんなにカッコ良くて、スマートで、余裕のある男の人なのに。
私の前では、何だか子供みたい。
「こういう面を見れるの、嬉しいんです」
おずおずと、片方の手だけ背中へ回してみる。
そっと指を置くと、一度だけびくりと震えた。
「可愛い」
言葉が出たのか、自分でもよく分からなくて。
背伸びをして、やっとのことで口元にキスをする。
「私以外の人の前で、こんなとこを見せちゃダメですからね?」
牽制の言葉を一つ吹き込み、かかとを下ろす。
「千波ちゃん、こういうのダメだよ……」
するりと腕から抜け出してみると、柄にもなく顔を赤くさせている。
そんな剣夜さんを見て、悦に入る私もどうかと思うけど。
「何のことですか?」
今日一番の笑顔をわざとらしく見せつけ、さっさと前へ歩いていった。