「怒ってる……?」
やっと言った言葉がコレだ。
怒るも何も、何て言えば良いのか分からない。
「怒ってない、よ……」
「そっか……」
沈黙。
チラッと壮紀を見ると、さっきよりも難しい顔になっていた。
「壮紀、顔怖くなってる」
それだけしか言えず、また押し黙る私。
シンとした教室に、部活動生の声だけが遠く響く。
「……怒ってくれたら、それで良かったんだけどなー」
額に手の甲を当て、自嘲気味に笑う壮紀。
沸沸と、何かがこみ上げてくる。
何でそんなこと言うのよ。
何でそんな顔するのよ。
何でそんな風に笑うのよ。
「壮紀!!」
怒りにも似た、この感情。
それでも、コレを彼にぶつけなきゃいけない。
彼のだらしなく緩んだネクタイを思い切り引っ張り、
私の唇の前に、顔を引き寄せた。


