昔から、何一つ不自由を味わった事が無かった。



一人っ子の私は、そこそこ裕福な家庭に生まれ、好き放題させてもらった。


おもちゃをたくさん買い与えられ、わがままを言って泣いたら、泣き止んでもらうよう、また何かを買い与えられた。






そう、“買い与えられた”。




今まで、何かしら“物”で片付けられてきた。





一時の満足感が過ぎれば、また何かを欲する。




それの繰り返し。


毎日が退屈で、退屈で、仕方が無かった。







そんな時だった。



「架月玲佳って知ってる?」




偶然、その名前を聞いた。




「知らない」と、首を横にふるふるとさせる。





「ウチらと同い年でぇ、超イケメン!!隣のクラスに居るから、見に行ってきなよ!!」





ただの興味。

ただの暇潰し。




それだけだった。