「小さい頃からずっと、誰かに看病なんてされたことなかったの」
お父さんも、お母さんも共働き。
風邪をひいたときにそばにあるのは、保健証と診察証だった。
「今もだけど、こういう時って、誰かそばに居て欲しいんだよね」
訊かれた訳でもなく、自分からペラペラと喋る。
いつもみたいに。
「迷惑は掛けたくないんだけど、誰か居てくれると、……やっぱり、違うね」
寂しくないし、心細くもない。
「壮紀に授業サボらせちゃったのは申し訳ないんだけど。
……居てくれて、ありがとね。壮紀」
今出来る、精一杯の笑顔。
妙に息が上がってしまい、何だか可笑しい。


