「先生っ!」
ガラガラッと大きな音を立てて、保健室のドアが開くと、のんびりと爪にマニキュアを塗っている先生が目に映る。
「どうしたんのー?」
「熱があるんです、鈴音!」
近くのソファーに降ろされると、先生は体温計を持ってきてくれる。
「えーっと、羽賀さん?」
「はい……」
「今さ、あなた生……、あー小野寺くん、ちょっと耳塞いでて」
恐らく、「生理中かどうか」を訊きたかったんだろう。
「いいえ……。生理中じゃないです……」
「そう。なら風邪か熱中症か日射病よね。どうしよっかなー?」
小首を傾げながら、「うーん」と唸る先生を他所に、壮紀は私に声をかけてくる。
「鈴音、俺、ここで待ってるから」
「え……?」
「授業受けなきゃダメじゃん」なんて言えずに、私はただただ頭を小さく縦に振るだけ。
その声を聞いたのか、先生は嬉しそうな声を上げる。
「あら?本当に?先生今から病院に行かなくちゃいけないから、そうしてもらえると助かる!」
私は寝とけば何とかなるとでも思っているのか。
内心不満に思いつつも、早く横になりたいと思う方が大きいらしい。
「羽賀さん、窓際のベッドで横になっててね!いくらでも寝てていいから!」
それだけ言うと、私をベッドへ連れていき、テキパキと布団を用意する。
壮紀に何を言ったのかは知らない。
だけど、目を閉じる直前に、先生の明るい声で、こう言っているのは聞こえた。
「お姫様抱っこで連れてくるなんて、先生初めて見ちゃったー!」


