「俺が連れてくからな!」 ガタンと勢い良く椅子が倒れ、ふわりと私の体が浮く。 「え?」と、不思議に思う間も無く、私は壮紀に抱えられ、廊下に出ていた。 ぼんやりとした視界に映るのは、廊下に居る生徒の驚いた顔、顔、顔。 そんなに珍しいものか、と思いながらも、頭の痛みに思わず目を瞑る。 「痛い?!」 走りながら訊いてくる壮紀。 「痛いに決まってるでしょ」と言おうとした。 けど。 言えなかった。 壮紀の顔が、あまりにも真剣で。 初めて見たその顔に、 不覚にも、見惚れてしまっていたから。