群青の月

「柚葉」


冬夜はタバコを咥えたまま、目の前の山の右上を指差した。


頭で考えるよりも先に、彼の指先に釣られてそこに視線を送ってしまう。


その瞬間、白くぼんやりと光る月が視界に飛び込んで来て…


「月……」


目を小さく見開きながら、思わずそう呟いていた。


「時々だけど、このくらいの時間に見れるんだ。今日はラッキーだな」


煙を吐いた冬夜が、月を見ながら嬉しそうに笑った。


「綺麗だろ?」


続けて訊いた彼は、呆然としていたあたしに視線を戻して目を細めた。