「……あの日はさ、俺にとっては最悪の日だった」


静かな部屋に響くのは、冬夜の声と二人分の息遣い。


カチカチと規則的に進む時計の秒針は、何かのタイムリミットに近付いているのかと思う程、あたしに緊張感を抱かせた。


「ずっと前から温めて来た企画を、友達だと思ってた同僚に横取りされたんだ……」


悔しげに呟いた冬夜の言葉に、胸の奥がグッと締め付けられる。


「何としてでも成功したくてさ……。プライベートの時間を犠牲にしてまで、必死に努力して……。後もう少しで、やっとちゃんとした形になるはずだったのに……」