「柚ちゃん」


不意に呼ばれた自分の名前にハッとして、慌てて振り返った。


「何か……あったの?」


優しい顔に、心配の色が浮かんでいる。


眉を寄せる吉岡(ヨシオカ)さんに、小さな笑みを向けて口を開いた。


「何でもないよ」


「でも……柚ちゃん、さっきからずっとため息ばっかりよ?」


シワのある目尻が不安そうに下がって、あたしを真っ直ぐ見つめる。


「ちょっと寝不足だから眠くて……」


下手な言い訳を口にしたあたしに、吉岡さんは困ったような笑みを浮かべた。