就業後、家に戻ったあたしは、携帯を握りしめて電話をかけるかどうしようか迷っていた。 午後8時過ぎ 今だったら、大丈夫だろうか。 一瞬、躊躇って携帯の通話ボタンを押した。 「もしもし、あたし……」 『はい、はーい!』 「……楽しそうだね」 『だって、今日は何を聞かせてくれるのかなぁって。 液晶にカナの名前を見ただけで、ワクワクしちゃった。あはは。で何?』 満面の笑みのみどりの顔が、目に浮かぶようだった。