空を見上げると、雲の狭間から朧気な月が顔を出していた。 風はまだ冷たい。 「野上、送っていくからタクシー乗れよ」 振り向くと、原口係長が穏やかに微笑んでいた。 あたしは小さく返事をして原口係長に駆け寄った。 出来るなら、今すぐに孝太に逢いたい。 もう、戻ってるかな。 逢いに行っても迷惑じゃない?