「大樹ー?何やってんの?」
大樹は受話器をおき、兄のほうに振り向いた。
「別になんでもねぇよ」
そう言って階段を上ろうとすると、
また健二が話しかける。
「良い事でもあったのか?」
大樹はしばらくすると、笑顔になり言った。
「失恋だよ」
少し驚いた表情の健二。
彼の頬にある涙が、きらきらと光っていた。
「はー。共学に行けば良かったなー」
「何だいまさら。馬鹿かお前」
「あははっ。馬鹿かもしれない」
久しぶりに大樹は、心から笑った。
それを見た健二も
安心したみたいだった。
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