「りー姉、ひろ兄を心配してくれ
てありがとう」

静君は微笑む
保育園児がするような微笑みでは
無く、

「僕が心配するとひろ兄が不安に
なっちゃてたからさ

分からないふりしてたんだ

僕を守ることでひろ兄は安心して
自分の心を守っていたみたい」

子供が言う台詞でもないが

「人間そんなものだよ」

これしか言えないよ
人の不幸で安心する、人の幸福を
素直に喜びもする人間の思考は、
間違いなく神にも分からない

「さ、行ってらっしゃい」

「行ってきます」

保育園に向かう静君に

「血筋かな」

ぽつりと呟いた言葉は誰にも聞いていなかった