私、佐藤有里には兄がいる。
・・・時々、本当にこいつ・・・いや、この人が兄???とか思ったりもするのだが、とりあえず、私より先に佐藤家に生まれてきたのだから、仕方がない。
兄は、推薦が取れなかった高校はあきらめ、今年から共学となった元、女子高に合格して、毎日、ご機嫌だ。
女子高だったとはいえ、名門校に、あの、サッカー馬鹿だった兄が、合格したので、親たちもご機嫌だ。
でも・・・私は、知っている。
やつの、不純な動機というものを。
「有里、晩御飯だってぇ」
いいながら、兄、要(かなめ)が顔を出した。
黙って何もしゃべらなければ、私の実の兄だけあって、悪くない顔をしているのに、中身が最悪だ。
「ちょっと、要! あんたね、年頃の女の子の部屋にノックもせずに入ってくるな!
いっつも、そういってるでしょ!」
「年頃の、女の子って誰?」
真顔で聞いてくる要。けってやろうかと、本気で思った。
「もしかして、有里のこと? 有里は、妹だから、女の子のうちにはいんないし。
第一、可愛い女の子は、実の素敵なお兄様のことを、呼び捨てになんかしたりしないね」
ち、ち、ちと、顔の前で人差し指を振る要。
・・・こ、こいつ。