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『なっちゃん(東)ドッキリ大作戦』本部・石蕗邸から、さらに郊外へ向かうこと十五分。
悠綺高校の門も通りすぎて先へ進むと、それほど大きくない、そして新しくもない遊園地がある。

タクシーに乗り込んだ(詰め込まれた)夏生と里吉は、そこに降ろされていた。

入場料を黒いカードで払おうとして係員を戸惑わせ、そのカードは使えませんと言われ、代わりにしっかり現金を用意していた里吉が支払い、ついでに外見のおかげで周囲の注目も浴びに浴びまくって、夏生はすでにすっかり疲弊してしまっていた。


「夏生さまっ、次はどれに乗りますっ?」


一方の里吉はというと、順番待ちをほとんどしなくていい遊園地に来たのがはじめてらしく、全力ではしゃいでいた。
日本に来て、保護者もつけずに外出したのもはじめてらしい。

今回は特に、強面の大男が六人もぴったり張り付いていたのだから、羽を伸ばすどころではなかっただろう。

目を輝かせる里吉は、夏生と二人ということよりも、むしろ遊園地で気楽に遊べることのほうに興奮しているように見えた。


「あ、写真! 夏生さま、記念写真撮りましょう?」


屋台で買ったチュロスを平らげた里吉が、写真撮影コーナーを見つけて飛んで行く。
疲れてはいるし機嫌も悪いが、外では本性を現すわけにはいかない夏生は、溜め息を吐いてその後を追った。