「ねぇ、名前は?」 不思議なベールに包まれた美しい彼女を、もっと知りたいと思った。 「そんなの…捨てた」 でも、彼女は悲しくそうつぶやいた。 焦点を合わせないで。 「そっか。家は?」 「ある。一人暮らし」 無表情なままの彼女は、まるで よく出来た人形みたいだった。 「じゃあ、何してんの?」 「月…見てる」 そういえばずっと、彼女の視線は向こうに注がれてたかもしれない。 「月になりたい」 そう言って初めて彼女は、頬を緩ませた。 「ふーん」