《致死ノベル》



──しかしそれは、私の勘違いだった。



私のまぶたから、『死』の文字がいつしか消えはした。

翌朝目覚めた頃にはもう『致死ノベル』を読んだことすらおぼろげになっていた。

しかしあのとき脳の片隅に、何かが巣くったのだとしか、私には思えない。

何故なら、あの日から頻繁に、ある夢を見るようになったからだ。

夢、だと思う。

確信を持って言えないのは、夢の内容を覚えてはおらずに、印象だけが残っているからだ。

強烈な。
鮮烈な。
しかし感情の輪郭だけの、漠然とした──恐怖。

ただ恐ろしく。
ただ怯える、私。