《致死ノベル》



時間も時間だったけれど、無意味な文字の羅列で、私は眠くなった。

もしあの眠気が、作者の意図だったとしたら──?

眠気を誘うよう、わざと無意味な文字を並べたてた……まさか、ね。

考えすぎ、と自分に苦笑いしながら、ケータイを閉じる。

他の作品を読む気持ちは失せていた。

「あーあ。お肌に悪いし、寝よ寝よ」

すぐに眠れる気はしなかったが、かといって何かする気力もなく、私はとりあえず目を閉じた。

閉じたまぶたの裏に、ケータイのディスプレイで何度も眩しく照らされた一字が、ぼんやりと浮かび上がる。

漢字を使ったのはこれのためか。

ひらがなやカタカナに比べて画数の多い漢字は、焦点がズレたとき濃い点として網膜に焼き付いたらしい。