「雪沢クン、逃げなくてもいいのに、どこ行っちゃったんだろうね」

真希チャンが、空いている雪沢クンの席に目を向けた。

ユニフォームやスパイクの詰まったアディダスのスポーツバッグ。
サッカーが好きで好きでたまらない普通の少年。

「先生。さっき刑事サンが、犯人は手配中だと言ってたけど、犯人、判ったんですか?」

日比野クンが尋ねた。

「いや、私はまだ何も聞いていないが」

相変わらず頼りない先生の返事。

「でも手配中ということは、やっぱり判ったんだよなあ?」

日比野クンがクラスメイトに答えを求めた。

「でなきゃそんな言い方しないだろ?」

井上クンの答え。

「犯人が判って、刑事サンが雪沢クンのところに来たと言うことは・・・」

わたしは恐ろしいことを想像してしまった。