一人になって、椅子に座ったまま周りを見渡していると、目の端で何か光った。

何かがおかしい。

空気自体が薄い幕になって向こう側が透けているような

目の前にスクリーンがあって、そこに向こう側の光景が映っているような――

すると、本当に目の前の景色がグニャっと歪んで、目に見えない透明なカーテン(にしか思えない!)の間から男の人が出てきた。


幽霊?!

ううん 脚はある

2本

とっても長くて素敵な脚が

ええと……顔も素敵

『イケメン』っていうより『美形』って言ったほうがいいかも


その人は驚いて硬直しているわたしに気づくと

「驚いたな……」と、つぶやくように言った。

驚いているのはこっちだってば!

「本物みたいだ」

片手がスッと伸びてきて、わたしの頬に触れた。

ええええっ! ちょっと待って! 何?

暖かい手がわたしの頬をこめかみまで撫で、髪の間に指を差し込み、肩のあたりまでそっと撫で下ろした。


わたし、多分ものすごい悲鳴をあげたと思う


悲鳴なのか金切り声なのか分かんないけど

彩名さんが飛び込んで来たとこみると、絶叫したのは確か


「圭吾? あなた何をしたの?!」

わたしをかばうように抱き寄せると、彩名さんがきつい声で問い詰めた。

「ごめん。生きていると思わなくて。まばたき一つしないから、彩名の人形かと思ってさ」

「思って――何?」

「髪を触った」


頬もですけどぉ~