「王子!!まだ姫に逢っては
 ダメとあれ程言ったのに!!」


突然部屋に入ってきた
小太りの年輩の女性が
王子と呼ばれた藤岡先輩の
腕をぐいぐい引っ張り
外へ出そうとした。


「姫、ごめんなさいね
 驚かせちゃって」



眉を下げて笑った女性は
先輩の背中を押して出て行った。



「どういう事…?」



辺りを見回してみると
高級な家具に
並べられたドレス
眩しい程のシャンデリアが
私の目に映っていた。




姫とは


私?



起き上がり
知らないはずのこの建物を
慣れた足取りで歩いた。

ダイニングテーブルに座る母を見つけると
なんともお洒落なカップで
紅茶を飲んでいた。



「あら、エリカ。
 やっと起きたの?」


「うん……」


「素敵なドレス買ったから
 今日はそれを着なさい」