童顔のように幼い顔。
けれども、年は20代だろう。
それは鞄を見ればわかる。
高い服なのか、それとも安い服なのか。
最近の高校生はお金持ちが多いと聞く。
学校よりもアルバイトを優先し、欲と遊びに植えている。
しかし、そんな彼らでもこの子のような鞄は買えないだろう。
白い鞄を両手に抱えている。

「ぁの・・・」

黒川は女を見つめるあまり、自分がどういう状況かに陥っているのかをわからずにいた。

「あのっ・・・」

女が先程よりも強い口調で言ったため、黒川は二度目にして、やっと自分のおかれている状況を察した。
倒れてから、しばらくの間は、女の顔を見ていた。
女の呼び掛けで、やっと顔から司会が移動したとき、黒川の両手は女の胸をもんでいた。

「あっ・・・すっ・・すみません」

一瞬、動揺して、少し揉んでしまったが、すぐに胸から手を離した。
黒川は同様のあまり、赤面つらになり、耳まで顔が赤くなってしまった。

「やだ、チカンよ・・・」

「やるならもっと、隠れてやれよ。おっさん」

周囲から飛び交う声が黒川の心に釘を打った。
電車は駅に到着した。
しかし、立ち上がることができない。
これは「肺癌です」と言われるよりも、胸を痛める状態だ。

(冗談ではすまされない)


全てが・・・これまでの人生が終わる瞬間が見えた。