保健室につくと、先生の指示に従いながら俺の足の具合を一生懸命に診る彼女の姿は、儚くて愛しいものだった。




彼女と話したのはこれ1回きり。




彼女のことがもっと好きになった瞬間だった。




中学までずっとバスケ一筋だった俺は藤咲姫華に出会ったことで恋を知った。




そしてもちろんこれが初恋。




同じクラスなのに話す機会があまりなくて、遠くから見守るように見つめてきた俺。




俺は2年生になり、また藤咲姫華と同じクラスになれた。




俺は嬉しくて、心の中で舞い上がっていた。




教室に入り、自分の席と藤咲姫華の席を確認した。




俺は前から4番目の真ん中の席か……。




藤咲姫華は窓側の前から3番目。




距離はまぁまぁ。




担任が来た後、藤咲姫華の方を向いた。




彼女は窓の外に顔を向け、瞳を閉じ、春風を感じていた。




彼女の漆黒の髪が風によってなびき、桜の香を運んでくる。




その姿がなんとも美しく綺麗で、輝いていた。