(「笹本さん！」)



「……朱里」



「えっ英征(ﾋﾞﾃﾞﾕｷ)の知り合い？」



女は言う。



「あ、ああ」



「もしかして元カノだったりしてそーでしょ」



「ただの知り合いだよ」



偶然再会してしまった
朱里の元彼の笹本英征に対して
どう反応していいか
戸惑いを隠せない朱里
それを見て夜月は笹本に聞く。



「誰だお前？」



「あ、これは失礼しました。僕は笹本英征といいます。今は朱里と何の関係もありませんから気にさわったのならすみません」



「………」



夜月は笹本という男を
一度見ていた。
それは雨の降ったあの日
朱里と出会った時だ。



「朱里も早いねぇ…もう新しい男が出来たわけ!?でもどうやら彼ホストみたいじゃん。あんまり深入りすると大金貢ぐ事になるぜ。気を付けた方がい…」



笹本が好き勝手
言いたい事を言ってる内に
朱里の目には涙が浮かんできて
夜月の後ろに姿を隠して
涙を拭っていた。
その事に気付いた夜月は
男に向かって一言。



「テメー殴られる前に消えな」



今まで見せた事ない顔付きで
夜月は笹本を脅す。



それから夜月は涙を見せる朱里に対して慰めの言葉を掛けずに歩き続けて
人気の少ない場所に着いた頃
足を止めて
ぎゅっと強く抱き締めた。



「…ごめんなさい……夜月くん」



夜月は何も言わず
優しい顔を見せて口付けた。