それに気付いた晴海は
拳を隠し、何事もなかったかの様に
私服に着替え始める。



夜月は最初から何もない様な顔をして
素早く着替えを済ませて
コートを片手に
控え室を出ようとした時、
今度は晴海の方が夜月に近付いて来て、低い声で言った。



「話の決着は日を改めてまた」



だが耳を貸さず部屋を出て行く。
夜月は誰がお前なんかという感じに思っていたのだ。



その後、夜月は朱里を晴海に
近付かせない様に店には
来るなと約束させた。



なぜ夜月が朱里にそんな事を
言ったか理由は一つだった。



晴海のあの様子を考えて
大体読めたのだ。



朱里を死んだ姉と思い込んで
抱き締めた上、写真を大事に持ち歩いていて、かなりムキになっていた事からして夜月は考えた。



晴海は朱里そっくりな、あかねという姉に姉弟以上の何か別の感情を抱いていたかもしれないと…。



それは恋愛感情という
許されぬ感情だ。



それが本当ならば、
朱里が狙われる可能性も有り得る。
身代わりに自分の側に置こうとするかもしれない。