「あれは晴海の奴が」



「知ってる」



「………」



神田川は夜月が晴海の事を言うと長々と喋り出したのだ。



「私と晴海くんが初めて会ったのは五年も前で偶然入った店で彼はウエーターのアルバイトをしていた。そこで私は彼の事を君の様にスカウトしたんだ。最初はあっさり断られたが私は諦めなかった。どうしても彼の様な男がウチの店に欲しかった。だから何度も店に通い、説得をしたのだ。その結果やっと彼もその気になってくれたみたいでホストになる事を承諾してくれた」



途中まで話を聞いていた夜月は
煙草に火をつけながら言う。



「だから何なんだ?俺は奴の話なんて聞きたくない」



「いいから聞いてくれ!ここからが重要なんだ。先週、君は晴海くんと朱里さんという女性について揉めたそうだな。晴海くんが君の連れて来た、朱里さんを亡くなったお姉さんと間違えて…」



「ああ、その通りだよ。いくら似てるからってあそこまでされちゃ俺もマジに怒るぜ」



「まぁまぁ落ち着いて…」



「朱里さんとあかねという晴海くんのお姉さんは本当に似ていたそうだ。晴海くんと同期で親しい海斗くんに聞いたから確かだ。海斗くんは前にお姉さんの写真を見たそうだから…。あかねさんは海外に留学した先で事故に遭い亡くなったそうだ」



「………そう」



「夜月くん」



少しの間黙ってから夜月は言う。



「この話はもういい。それと今日店に出てやるから…んじゃ確かに金はいただいたからな」