躊躇い気味の朱里に
夜月は優しい口調で言う。



「一杯でいいから…な?」



「夜月くんがそこまで言うなら」



「じゃ行こうか」



席を立つと夜月は
朱里の肩を抱きながら歩き出す。
その途中で晴海が
こっちに向かって歩いて来た。



「何だ、戻って来たのか」



夜月が冷たく言うと
晴海が答える。



「仕事を休むわけにはいかないからそれに今日はオーナーが顔を出すそうだから…ところで君は?」



「お前には関係ない」



睨み付けながら
夜月は外の方へ行く。



すれ違った時、晴海は朱里の顔を
じっと見つめていたが
朱里は気付いていなかった。



「あかねにそっくりだよ」



一言呟いて晴海は
客の待っているフロアに行く。



その一方で朱里は夜月に聞いた。



「いいの?オーナーさんが来るのに抜け出して来ちゃって…やっぱり戻った方がいいよ」



「ああ…。オーナーなら全然平気だ」