「あかね!」



知らぬ名前を呼ばれながら
朱里は視線を擦らす。
するとそこには支度を済ませた
夜月が立っていた。



(「夜月くん!!」)



「あかねっ」



「あの、ちょっと離して下さい。あたし人違いです(誰か…夜月くん助けて)」



朱里の心の声が
夜月に聞こえたかの様に
腕をグッと引っ張られて
ナンバーワンホストから
離れる事が出来た。



「晴海、何やってんだっ」



「何って…」



「俺の連れて来た客に手を出すとはいい度胸してるな。いくらナンバーワンでも許さないぜ」



「だって彼女は俺の…」



「この女は朱里だ。お前の言ってる女とは別人だ」



「あ…あかり?」



「人違いもいい加減にしねーと」



夜月が言おうとしたら
晴海が遮る様に言った。



「そっか…そんなわけないよな。あの時死んだ姉がこんな所にいるわけない。悪い…あんまり似ていたからつい…」



晴海は血相を変えて持ち場から
去って行ってしまったのだ。